The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics

理事長挨拶

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梅野 博仁
(日本音声言語医学会理事長)

このたび日本音声言語医学会の理事長に選出していただきました.大変光栄に存じますとともに,本学会の歴史と学際的な意義の大きさを鑑み,まさに身の引き締まる思いでおります.これからの任期3年間において,今までの本学会活動方針を受け継ぐとともに,コロナ禍で失われた会員間の繋がりの活性化と更なる学術・教育の推進、ならびに、何よりも音声言語障害等を持つ患者さんに貢献できる学会活動を進めて参りたいと考えております.会員の皆さまの本学会への益々の積極的なご参加とお力添えをお願い申し上げます. 本学会は1956年(昭和31年)に設立され、2025年(令和7年)には設立70周年を迎えますので、記念行事を神戸の総会で予定しております.現在、本学会は言語聴覚士,医師,学校教諭,研究者,ほか多くの職種からなる約1600名あまりの会員が所属し,音声,言語、聴覚を中心に、高次脳機能、発達、嚥下などを含めた幅広い領域の学術活動が行われております.

実際の活動として、1回/年の学術講演会開催,4号/年の学会誌刊行,研究助成に加えて,2020年より、学会誌に掲載された論文から優秀論文賞(音声部門・発話部門・言語部門)を3編、奨励賞を1編選定し、総会で授与式と受賞記念講演を行っております.また、2018年に日本喉頭科学会と共同で「音声障害診療ガイドライン」を公表し,現在は「Dysarthria診療の手引き」を作成中です.更には、大森孝一前々理事長のご尽力により、治療者の教育に関わるプロジェクトとして、2019年より音声障害に関する教育ワークショップを開催し,定期的な開催を行っております.2019年には,香取幸夫前理事長のご尽力により本学会が2005年に刊行した「動画で見る音声障害」を改訂しております.ご好評をいただきました前版の構成を踏襲しつつ,画質のよい内視鏡動画を全疾病で刷新し,より視認性のよい教材として刊行しています.ぜひ多くの会員の方々やこれから音声言語医学を学ぶ方々に活用していただけますと幸いです.

本学会は、新たに音声言語認定制度を設けました.2022年4月に「音声言語認定医・認定士テキスト」を発行し、同年7月には「音声言語認定医・認定士DVD」を作成いたしました.2022年11月26日には第1回音声言語認定医・認定士の資格試験が行われ、以降は毎年の資格認定試験が行われます.受験資格等については学会HPをご参照ください.

これから加速する少子高齢社会に向けて,本学会活動が音声言語障害ならびに聴覚障害等を持つ小児や高齢者の治療支援を行うことは、言語コミュニケーションの維持支援に繋がり,文化的な社会を維持するうえで重要な意味を持ちます.本学会は多職種からなる様々な専門家が所属し,多施設の共同研究により新規治療の開発や基礎的研究に大きな成果を産み出す可能性を備えています.恩師からの教訓ですが、学問の発展にはCompetition(競争)とCooperation(協力)の二つのCが必要です.会員相互による新知見を目指した切磋琢磨と、情報交換や共同研究といった方がわかりやすいかもしれません.会員の皆様の益々のご指導とご協力をお願い申し上げます.